ocr-generated Icやもややゆゆい
に天命堂
快傑黒頭巾
「あッ兄さん、黒頭中が裏口へ出たよっ」
珠三郎は、あき小屋を表から家へかけぬけた黒鎖中の姿を見つけました。黒頭中は、
なに思ったか、裏口においてあるあき構のかげへしゃがみました。と思うと、両手を
いなずまのように働かせて、印ばんてんや股ひき、腹がけをぬぎすてる。と、思いが
けなくも、その下からあらわれたのは、ようかん色の古単衣とよれよれの古棒だ。ま
たたきつする間のあざやかな早がわりは、まるで、歌舞伎芝居の名優の舞台裏を見
るような早業です。
だが、この早がわりの姿を見た珠三郎は、
「おや、あの姿は、どっかで見たことが、
小首をかしげました。とたんに、快傑黒頭巾があの大きななぞを包む黒い頭中を、お
しげもなくむしりとってしまったのです。と、頭の中からあらわれたその素顔!
れを一目見た珠三郎も源一元いも、アッといったきり、あいた口がふさがらない。夢
ではないか?
意※